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学生は年金の支払いに猶予期間がある?「学生納付特例制度」とは?

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来年で成人になる学生ですが、私のような学生には年金の納付に猶予期間がある「学生納付特例制度」という制度があると聞きました。「学生納付特例制度」の仕組み、手続きの方法や時期について教えてください。

一定の所得以下の学生の年金納付は免除されます。年に一度申請を行いましょう。

テレビや新聞でよく耳にする「年金」ですが、その制度についてご存知でしょうか?
年金には国民年金と厚生年金保険の2種類があり、原則20歳以上の学生は国民年金の納付が必要になります。


しかし、20歳以上といっても働いている人もいれば、大学や専門学校に通っていたりと、人によって状況が大きく違います。学生の場合は、勉強が本分であるため収入が少なく、国民年金の保険料はとても払えないという状況が多いというのも実情です。そのため、学生には国民年金保険料の納付を猶予してもらえる「学生納付特例制度」というものがあります。


学生納付特例制度とはどんな制度?


学生納付特例制度とは、条件に当てはまることで、国民年金保険料の支払いを先延ばしにすることができる制度です。「免除」になるのではなく、あくまで「先延ばし」になるため、きちんと後から納付(追納)する必要があります。


学生納付特例制度の条件とは?

「学生納付特例制度」は、一定の所得以下の学生が対象です。一定の所得とは以下とされています。


年間所得118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等


※所得とは収入から給与所得控除等を引いたものです。
※学生本人のみの所得で判断し、家族の所得の多寡は問いません。


上記でいう学生とは、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校など、夜間・定時制課程や通信課程の方も含まれるため、ほとんどの学生の方が対象となります。実際に対象校に関しては「日本年金機構ホームページ」で確認することが可能です。


※「学生納付特例対象校一覧」http://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/gakutokutaisyouko.html (最終確認:2017年9月21日)


学生納付特例制度の手続き方法とは?

学生であることを問わず、20歳になる誕生日の前月になると日本年金機構から「国民年金被保険者資格取得届書」が送られてきます。そこに必要事項を記入し、住民票のある市区町村役場の国民年金担当課か、最寄りの年金事務所に「学生納付特例制度」申請書を提出しましょう(通っている学校が窓口となる場合もあります)。


<手続きで提出する書類>

「学生納付特例制度」の手続きにはいくつか提出する書類がありますから、忘れないようにしましょう。


・国民年金保険料学生納付特例申請書

・年金手帳(氏名が載っているページ)または基礎年金番号通知書どちらかのコピー。

※年金加入手続きと同時に申請をする場合は必要ありません。

・学生証(有効期限・学年・入学年月日が記載されている)の裏表面のコピーまたは在学証明書の原本どちらか。


所得がある場合は、所得証明書等も必要になります。詳しくは上記の窓口に確認しましょう。


年に1回の申請が必要


学生納付特例制度の有効期間は、毎年4月~翌年3月までです。
例えば、2017年9月で20歳になる人は、まず2017年9月~2018年3月までの猶予申請を行うことができます。それ以降の2018年4月~2019年3月までの猶予申請は、再度2018年4月以降に行う必要があるということです。


手続きを忘れると、「未納」扱いに!


学生納付特例制度の手続きをせず、また保険料も支払わないでいると「未納」として扱われます。未納といわれても、年金なんて先のことすぎて、ピンとこないかもしれませんが、年金は老後にだけ受け取るものではありません。


障害基礎年金を受給できない可能性も

年金の中には、事故やケガによって、仕事や日常生活で困難がある人に支払われる「障害基礎年金」というものがあります。この障害基礎年金の受給条件は、障害に関する事故が発生した月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間が2/3以上ある場合、または事故が発生した月の前々月までの1年間に保険料の未納期間がないことが必要になります。


学生納付特例制度をきちんと申請している場合、この期間は未納期間としては扱われないので、仮に学生生活の途中で事故が起こり、保険料を納めていなかったとしても支給されます。その反対で、学生納付特例制度の手続きをせずにいると、未納ということで障害基礎年金を受給することができなくなります。


学生納付特例制度を利用したら追納を忘れずに


最初にも記載しましたが、学生納付特例制度は、年金の納付が「免除」になったわけではありません。そのため、制度を利用した後は、さかのぼって納付(追納)する必要があります。


追納方法とは?

学生納付特例期間については、10年以内であればさかのぼって納付することができます。国民年金保険料の追納には納付書が必要になり、さらに納付書の発行は申込みが必要なため、管轄の年金事務所に確認をするようにしましょう。


また、10年を過ぎても追納をしていない場合、未納とみなされてしまいます。未納になると、将来、年金を受け取れないという可能性がでてきてしまうので注意が必要です。


未納のままでは老齢基礎年金を受給できないことも!

老齢基礎年金とは、最もベースとなる国民年金に加入し、一定期間保険料を納付した被保険者が一定年齢に達したとき給付される年金のことです。現在、老齢基礎年金を受給するためには10年以上の保険料納付済み期間が必要とされています。


例えば、保険料納付済み期間が8年で学生納付特例期間が2年の場合なら、合計して10年になるので8年分の期間に応じた年金が受給できますが、保険料納付済み期間が8年で保険料滞納期間が2年の場合、このままでは老齢基礎年金は受給できません。学生納付特例制度を利用した人は、将来のためにも追納を忘れないようにしましょう。


またこれから20歳をむかえるという学生の方は、学生納付特例制度を活用して未納期間をつくらないことが大切です。大人になる第一歩として、自分の年金について正しい知識を身につけるようにしましょう。


社会保険労務士 田治米 洋平

筆者の写真

給与や年金の疑問をわかりやすく解説します。

社会保険労務士の立場からお金に関するお話をお届けしています。 給与や年金は多くの人にとって身近な問題です。 最近何かと話題のこれらの情報を、私、田治米洋平がナビゲートします。

【URL】 http://www.sr-tajime.com/
【経歴】 社会保険労務士。同志社大学卒業後、IT企業にて人事管理部門にて勤務。 2006年、独立。2014年青山学院大学大学院法学研究科修了。
【監修】 「起業に関するお金Q&A」(日経産業新聞)、IT現場の労務問題(「労務事情」産労総研)、「資金調達マニュアル」(経産省DG)、「労務トラブル相談」連載(マイナビ)他

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