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年金が納付できないときに利用したい年金の免除制度と猶予制度とは?

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2017.12.08 更新2017.12.22

失業中で経済的に厳しく年金保険料の納付が難しい場合、年金保険料の納付が免除されたり、納付を遅らせることができる猶予制度があると聞きました。国民年金保険料の免除制度や保険料納付猶予制度の仕組み、対象者について教えてください。

所得が一定以下の方は年金の免除・猶予が可能。追納することで受給額を増やすこともできます。

経済的に厳しい状況にあると、国民年金保険料を納付することが難しい場合もあるでしょう。
そこで、国民年金保険料を納付することができない方のために、国民年金には、保険料の納付を免除してもらえる制度(免除制度)や納付を遅らせてもらえる制度(猶予制度)があります。


年金保険料の免除制度


所得が低いなど経済的に厳しいときに、年金保険料の納付が免除になる制度があります。
年金保険料免除制度の種類は、大きく2種類、法定免除と年金保険料の納付が経済的に困難なときに免除や納付猶予になる制度があります。では、それぞれの制度の条件や、受給額について説明していきましょう。


[ 1 ] 法定免除とは?どんな条件があるの?


生活保護を受けている方や障害を持っている方などが、年金保険料の納付が法的に免除になる制度です。以下の条件にあてはまると、年金保険料が法定免除となります。


・生活保護の生活扶助を受けている

・障害基礎年金、障害厚生年金または障害共済年金(どちらも2級以上)を受けている

・国立および国立以外のハンセン病療養所などで療養している


この場合、「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」を市区役所または町村役場に提出することで、年金保険料の納付を免除することができます。また、生活保護を受ける必要がなくなったなど要件に該当しなくなった場合にも「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」を市区役所、または町村役場に提出する必要があります。


法定免除になった場合、将来いくら受給できるの?


納付が免除になった期間についての老齢基礎年金の受給額は、1/2で計算されます(平成21年3月までは1/3)。過去にさかのぼって法定免除の要件に該当した場合、その期間に納めた国民年金保険料は返還されます。


※法定免除になっていたが、受給額を増やすために保険料を納付したい場合は、あとから追納することができます。


[ 2 ]  年金保険料の納付が経済的に困難なときに免除や納付猶予になる制度とは?どんな条件があるの?


所得が低いなど経済的に国民年金保険料の納付が難しい場合に、自ら申請して承認されると、国民年金保険料の納付が全額または一部が免除される制度です。
申請免除は4つに分けられ、それぞれ対象者が異なります。


・全額免除


前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円


・4分の3免除


前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等


・半額免除


前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等


・4分の1免除


前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等


※「扶養親族等控除額」「社会保険料控除額等」は、年末調整・確定申告で申告している金額です。
本人・世帯主・配偶者の所得で判断します。


保険料免除の申請書に国民年金手帳または基礎年金番号通知書を添えて、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ提出します。


免除や納付猶予になった場合、将来いくら受給できるの?

免除になった期間についての年金額は、以下のようになります。


・全額免除

1/2(平成21年3月分までは1/3)


・4分の3免除

5/8(平成21年3月分までは1/2)


・半額免除

6/8(平成21年3月分までは2/3)


・4分の1免除

7/8(平成21年3月分までは5/6)


※いずれの免除についても受給額を増やすために保険料を納付したい場合は、あとから追納することができます。


年金保険料の納付猶予制度


国民年金保険料の納付を遅らせてもらえる、納付猶予制度。保険料納付猶予制度の対象者は、50歳未満で前年所得が以下の計算式で計算した範囲内である方です。


(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円


※「扶養親族等控除額」は、年末調整・確定申告で申告している金額です。
本人・配偶者の所得で判断します。


納付猶予制度は「学生は年金の支払いに猶予期間がある?「学生納付特例制度」とは?」でご紹介した学生納付特例と同様、年金の未納扱いにはなりませんが、受給額として反映されません。過去10年分までさかのぼって追納できるので、年金額に反映させたい場合はあとから追納してください。


年金保険料を未納した場合のリスクに注意


経済的に国民年金保険料の納付が難しいからと、今回ご紹介した制度を活用せずに、何もせず未納のままにしておくと、年金が受給できなくなる場合があります。


病気やケガによって、生活や仕事に影響がある場合に受給できる「障害年金」と被保険者が亡くなった場合に、被保険者によって生計を立てていた人が受給できる「遺族年金」というものがあるのですが、これらの年金を受給する条件に、「未納がない」ことが必要となっています。


具体的には、障害や死亡に関する事故が発生した月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間が3分の2以上ある場合、または事故が発生した月の前々月までの1年間に保険料の未納がない、という要件になっています。今回ご紹介した、年金保険料の免除制度や猶予制度を受けた期間は、未納扱いではなく、保険料を納付したと扱われます。経済的に保険料の納付が難しい方は、そのまま未納にせず、きちんと手続きを行うようにしましょう。


社会保険労務士 田治米 洋平

給与や年金の疑問をわかりやすく解説します。

社会保険労務士の立場からお金に関するお話をお届けしています。 給与や年金は多くの人にとって身近な問題です。 最近何かと話題のこれらの情報を、私、田治米洋平がナビゲートします。

【URL】 http://www.sr-tajime.com/
【経歴】 社会保険労務士。同志社大学卒業後、IT企業にて人事管理部門にて勤務。 2006年、独立。2014年青山学院大学大学院法学研究科修了。
【監修】 「起業に関するお金Q&A」(日経産業新聞)、IT現場の労務問題(「労務事情」産労総研)、「資金調達マニュアル」(経産省DG)、「労務トラブル相談」連載(マイナビ)他

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