トラブル解決術

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登山中に雷が鳴ってきた時の対処方法とは?

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今年の夏休みに家族で登山にチャレンジしようと思います。簡単なハイキングレベルからスタートしようと思うのですが、1つ気になるのがお天気です。よく「山の天気は変わりやすい」と言いますが、もし登山中に雷に遭遇した場合、どのように対処すればいいのでしょうか?

雷は相対的に高いところに落ちます

●雷になるべく遭わない方法

まず予防について。雷に絶対遭わないということは難しいのですが、雷に遭う確率を下げる方法はいくつかあります。まず雷は「午後、特に14時以降に起きるものが多い」ということです。もちろん朝の雷も、真昼の雷もあるのですが、確率としては地表付近の気温が上がる午後に、上昇気流から積乱雲が発達して雷が発生するパターンがいちばん多いのです。特に雷が発生しやすい夏は、午後のなるべく早い時間帯に行動を終えるプランにすれば、雷に遭遇する確率は下がります。


気象情報に注意し、雷注意報はもちろん、「上空に寒気が流れ込み」「大気が不安定に」などの言葉が出てきたら、雷に注意すべき日だと認識して、場合によっては行動プランに活かしてください。


●もし雷に遭ったら

遠くでゴロゴロと鳴り始めたら、安全な建物の中に避難しましょう。いちばん雷に気をつけなければいけない夏の高山などでは、行く手に積乱雲があり、そこで光る稲妻まで見えることがあります。そんなときは迷わず近くの山小屋に避難し、待機しましょう。


一番気をつけたいのは、積乱雲がやってくるのではなく、自分のいる場所で積乱雲が発生しているときです。遠くからやってくるのは分かりますが、積乱雲が発達している中にいる場合は、「ガスが湧いて来たな」としか思わないからです。晴れてはいるのだけれど水蒸気で霞んで、遠くにモヤがかかっているような湿気の多い日、急に雲に包まれたのだけど、なんとなく蒸し暑いし、風の方向が一定しないでくるくる変わる。そんなときは、発達中の積乱雲の中にいる可能性が高いです。AMラジオをつけて、ザーッという雑音が入るようでしたら、間違いありません。すぐに下記の退避行動に移ってください。


●雷の性質を理解して行動する

退避行動とは何か…をご説明する前に、雷の性質を少し知っておきましょう。雷はどこに落ちるのか。以前は金属など電気伝導体に落ちると考えられていましたが、空気という非伝導体を突き破ってくる雷にとって、それはあまり関係ないことが分かってきました。雷は電気を通す、通さないに関係なく、相対的に高い所、つまり出っ張っているものに落ちます。したがって退避行動とは、自分が高い出っ張りにならないようにすることです。


もし稜線(尾根)上にいたなら「安全な斜面を下りて低い位置で、しゃがみこんでなるべく姿勢を低くする」これが退避行動です。このとき、近くに大きな岩や高い木など相対的に高い出っ張りがないかどうかも確認してください。金属を身から離してもあまり意味はありませんので、とにかく自分が出っ張りにならないことです。


また高い出っ張りから45度の角度で降ろした線の中には、雷は落ちないという性質もあります。この性質を応用したのが避雷針で、わざと高い出っ張りを作って、そこへ雷を落として地中にアースして電流を逃がし、その先端から45度の範囲には落雷しないようにしています。したがって、林の中にいるときは木より背の低い人間に雷が落ちる可能性は低く、比較的安心と言えますが、自分の周囲にその辺でいちばん高い木がないかどうか、常に注意してください。


ハイカーが避雷針のないあずまやで雨宿りしていたら、あずまやに落雷したという例もあります。テントも危険です。山小屋にはたいがい避雷設備があり、車の中も安全とされています。とにかく自分が出っ張りにならない、出っ張りのそばにいない、が原則です。


ネイチャーガイド 橋谷晃

筆者の写真

正しい知識とルールで、大自然を満喫しましょう!

自然を楽しむトレッキングなどを開催するスクールの代表として、初心者の皆さんと 年間100日ほど、山の自然を楽しんでいます。安全で楽しい自然との付き合い方を学 んで、大自然をエンジョイしましょう。

【URL】 ネイチュアリング・スクール「木風舎」http://www.mokufusha.com/
【メディア】 NHK教育テレビ「チャレンジ!ホビーあなたもこれから山ガール」に講師 役としてレギュラー出演したのをはじめ、テレビ東京、J-WAVEなどテレビ・ラジオ 番組に出演多数。
【著書】 『チャレンジ!ホビーあなたもこれから山ガール』(NHK出版)、『トレッキ ングのABC』『失敗しない山道具選び』(山と渓谷社)、『ネイチャースキーに行こう』 (スキージャーナル)、など多数。

※上記に関するご質問、お問合せは、原則受付けておりませんのであらかじめご了承ください。